胚培養士とは?About embryologist team

高度な技術と知識、的確な判断力で 治療をサポートします。

胚培養士とは、不妊治療の現場で卵子・精子・胚を専門に取り扱う技術者です。採卵した卵子に体外受精や顕微授精を行い、培養、凍結、移植までお世話しています。また、培養環境の管理や受精卵のデータ管理も、重要な仕事です。胚培養士の資格には、日本卵子学会の認定する「生殖補助医療胚培養士」があります。この資格は、厳しい基準をクリアした技術者のみが取得できるもので、信頼性の高い技術力を証明します。

当院には管理胚培養士の院長の元、6名の胚培養士が在籍しており、全員が日本卵子学会認定生殖補助医療胚培養士資格を保有しています。また、6名全員が顕微授精までの高度な技術を習得しており、安心して大切な受精卵をお任せいただけます。

培養室からこんにちはLabo Diary

「培養室ってどんなところ?」「どんな人が関わっているの?」そんな疑問にお答えするべく、培養室の日常やスタッフの想いをブログで発信しています。不妊治療を考えている方や通院中の方にとって、少しでも安心していただけるよう、わかりやすくお伝えしていきます。

培養士の1日A day of a embryologist

培養室で培養士は実際にどのような業務をしているの?

卵子と精子を受精させ、培養するのは培養士の腕にかかっているといっても過言ではありません。

普段、なかなか見ることのできない胚培養士の1日に密着してご紹介します。

ボタンのある画像ではクリックしていただくと詳細な説明をご覧いただけます。

胚の観察

受精卵を培養するタイムラプスインキュベーター

胚培養士の朝は早いです。クリーンルームに入るとまず、培養環境のチェックを行います。

タイムラプス分割動画

当院では全例、カメラを内蔵したタイムラプスインキュベーター(受精卵を培養器内で観察しながら撮影し、動画として記録できる装置)で培養を行っています。タイムラプス動画で、正常に受精しているか、分割しているかを観察します。

採卵

卵子を探す様子

医師が採取した卵胞液を受け取ります。オペ室とクリーンルームは小窓でつながっており、すぐに卵子の確認が可能です。スマートステーションと呼ばれる、卵子に適切な温度とガス環境が保たれた保育器のような装置の中で、卵子を回収していきます。卵子を見つけたら、鐘を鳴らして医師に知らせます。

胚の凍結

胚を凍結している様子

採卵後56日間培養し、胚盤胞(受精卵が着床できる状態)に成長したら凍結を行います。凍結はガラス化という方法で行います。凍結に対して不安に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、胚へのダメージが最小限となる方法で行っているため安心しておまかせいただけます。

卵子と精子の準備

採卵後の卵子は卵丘細胞に覆われているため、それらを除去します。精子は洗浄し、最適な濃度に調整します。検査室では、初診時の精液検査を行っています。

胚の融解

解凍直後の胚の様子

凍結保存中の胚を、本日の胚移植に向けて融解します。融解直後の胚は一時的に収縮していますが、時間の経過とともに回復していきます。

レーザーによる開口部作成後の様子

着床を促すため透明帯(卵子を保護する膜)を薄くするアシステッドハッチング(AHA:孵化促進法)を行い、胚の透明帯からの脱出を促します。

培養後

アシステッドハッチング後、胚が透明体から脱出している様子。

体外受精、顕微授精

ピエゾと従来の先端の比較

体外受精は卵子と精子を一緒にして受精させます。顕微授精(ICSI)は卵子1個に精子1匹を注入する方法です。当院の顕微授精は全例ピエゾICSIを行っています。ピエゾICSIとは、先端が平らなガラス針を用い、卵子に精子を注入する際に微細な振動を与える技術です。従来の顕微授精よりも卵子への刺激が少なく、変性率の低下や受精率の向上が報告されています。

ピエゾICSIの様子

ピエゾICSIの様子を動画でご覧いただけます。

紡錘体が見える卵子の様子

顕微鏡下で見ることのできない紡錘体という非常に重要な構造を可視化できる装置も導入しているため、紡錘体を傷つけることなく顕微授精を行うことが可能です。

胚移植

スマートステーション内でカテーテルの中に胚を吸引し、隣のオペ室に移動して医師に手渡します。「○○さんです、入れます、1、2、3」の合図で胚を子宮に戻します。エコーで確認しながら注入するため、患者様もその様子をご覧になれます。カテーテル内に胚が残っていないかを確認し、胚移植は終了です。

培養士の1日の大まかなスケジュール、いかがでしたでしょうか?

卵子·胚·精子に関わる全ての操作においてダブルチェックを行い、ミスがないように気を付けています。1つ1つの操作を絶対に間違えてはいけないプレッシャー、集中力、器用さや倫理観などが求められる仕事ですが、自分たちが顕微授精や胚移植で関わった患者様が妊娠された時は、とても嬉しく感じます。

陰ながら皆様のお役に立てるよう、これからも精進してまいります!(培養チームスタッフ一同)

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受精卵を培養する
タイムラプスインキュベーター

受精卵を培養するインキュベーター内にカメラが内蔵されており、受精卵を外に取り出さずに観察が行えます。インキュベーター内は患者様1人1人個別の培養スペースで区切られています。胚の様子はAIが自動解析し、過去のデータと比較して評価を行います。AIによる胚の評価を参考にしますが、最終的な判断は培養士が行います。

レーザーによる開口部作成

当院ではレーザーアシステッドハッチング(Laser Asisted Hatching)システムを導入しています。アシステッドハッチングは、凍結融解後に透明帯が硬化して胚が脱出できなくなる問題を解決するための技術です。この技術では、胚が透明帯を破って脱出しやすくなるよう、透明帯に小さな開口部を作ります。これにより、胚が着床しやすくなり、妊娠の成功率が向上することが期待されます。

紡錘体が見える卵子の写真

顕微授精が行える卵子は、MⅡ期(第二減数分裂中期)の成熟卵子です。しかし、成熟卵子全てが受精可能とは限りません。その指標となるのが紡錘体という細胞小器官です。